
親の介護と相続対策を同時に進めるべき理由
親が70代、80代を迎えると、介護の問題とともに直面するのが「相続」の問題です。特に注意すべきなのは、親が認知症を発症して判断能力が低下すると、親名義の銀行口座が凍結されたり、実家の売却や契約行為ができなくなったりするリスクです。
介護費用を親の貯蓄や不動産売却で賄おうと考えていても、事前に対策をとっていないと資金を動かせなくなる事態に陥ります。そのため、介護が本格化する前の「親が元気なうち」に準備を進めることが極めて重要です。
認知症による資産凍結を防ぐ2つの制度
親の資産を守り、介護費用をスムーズに捻出するための代表的な仕組みとして「家族信託」と「成年後見制度」があります。
- 家族信託:親(委託者)の財産管理を信頼できる子(受託者)に託す契約です。親の判断能力があるうちに契約を結ぶことで、将来認知症になっても子が親の口座から介護費用を引き出したり、実家を売却したりできます。
- 成年後見制度(任意後見):判断能力が低下した後に家庭裁判所を通じて選任された後見人が財産管理を行う仕組みです。元気なうちに後見人と支援内容を決めておく「任意後見」と、発症後に申し立てる「法定後見」があります。
スムーズな相続のために準備しておくべきこと
介護と並行して、将来の相続トラブルを防ぐための準備も進めましょう。
まずは「財産目録」の作成です。預貯金口座、不動産、有価証券、保険契約などをリスト化し、どこに何があるかを把握します。次に「遺言書」の作成を検討します。特に公正証書遺言にしておくことで、遺産分割協議でのトラブルを大幅に減らすことができます。
今日からできる親との話し合いのヒント
いきなり「相続」や「遺言」の話を切り出すと、親が警戒したりショックを受けたりすることがあります。まずは次のようにアプローチしてみましょう。
- 「将来、万が一のときに希望通りの介護を受けられるように準備したい」と介護の視点から話す
- 「自分たちの老後資金の計画を立てたいから、実家の将来について教えてほしい」と相談の形をとる
- 専門家(司法書士や税理士)の無料相談を活用し、第三者を交えて話し合う
親の意志を尊重しながら、早めに対策を講じることで、介護費用の負担軽減とスムーズな資産承継が可能になります。まずは家族で実家の未来について話し合う時間を作ってみてはいかがでしょうか。